[本]小説国内
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- 精霊の守り人(09/21)
- フラッタ・リンツ・ライフ(09/13)
- ダウン・ツ・ヘブン(09/01)
- 食堂かたつむり(08/25)
- ナ・バ・テア(08/21)
- 流れ行くもの(08/01)
クレィドゥ・ザ・スカイ
2008.09.27(16:04)
「スカイ・クロラ」シリーズ、時系列で4作目に当たる作品です。![]() | クレィドゥ・ザ・スカイ (2007/06) 森 博嗣 商品詳細を見る |
今回の主人公は、前作 「フラッタ・リンツ・ライフ」につづき クリタジンロウです。
前作の終盤で、大規模な戦闘に参加した彼は、大勢の敵機に囲まれ墜落してしまいました。
ラストで 「またいつか 必ず空を飛ぶ」 とつぶやくクリタの言葉は、彼の いまわのきわの言葉のようでもあり、生還の暗示のようでもありました。
生死のわからないまま幕切れとなった前作に非常にやきもきしましたので、今回 「クレィドゥ・ザ・スカイ」 では病院に入院中の様子から物語がはじまってホッとしました。
ああ、良かった。 クリタはやっぱり死ななかったんだ。 と。
しかし、入院中のクリタは、意図的に強力な薬を投与されており、感情や記憶の殆どを奪われた状態にあり、前作で大きく芽の膨らんだ感のあった きな臭さはさらに激しく、あらわになってゆきます。
確かなものは、身に染み付いた「空を飛びたい」という強烈な思いだけ。
そんな状態の彼が入院中の病院から逃走します。
今回の物語は、その逃走劇が全編を占めます。
強力な薬のせいで記憶が曖昧になった主人公の目線で語られる逃走劇は、ときに前触れもなく蘇った記憶が白昼夢となって物語中にあらわれます。
とくに、彼が唯一名前とともに鮮明に覚えているただ1人の人物クサナギスイトは繰り返し追っ手となって彼の白昼夢に現れるのですが、読み手はそれが現実の出来事だと錯覚させられ、幾度も、ああクリタは殺されてしまった、クサナギスイトが殺してしまった・・と思わされます。
読み手が、物語中の主人公と同じように、深く濃い記憶の霧の中をさまよう羽目に陥るこの仕掛け。
作者は、作品に一人称を使うメリットを最大限うまく使っていると脱帽させられます。
が、仕掛けはひとつではないのですよね。
話しがすすむにつれ、この物語を語っている「僕」は本当にクリタジンロウなのか?が曖昧になってゆくのです。
前半のエピソードを根拠にすれば、「僕」はクリタに違いないと思えるのだけれども、読むにつれて「僕」がクリタではつじつまの合わない部分が出てきて混乱させられます。
なんと、読者は、主人公の記憶の霧の中をさまようだけでなく、気づけば主人公が誰だかわからないという深くて濃い霧の中をもさまよう羽目に陥っているというとんでもない仕掛け。
結局、私には最後まで主人公が誰だかわからないままでした。
しかし、いいように作者の意図どおりに踊らされているこの感じは、なぜかとても心地良い。
次作への期待も高まります。
次の作品は いよいよ 「スカイ・クロラ」です。
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精霊の守り人
2008.09.21(13:46)
文化人類学者がティーンエージャー向けに書いたファンタジー小説。30才の女用心棒という異色の主人公が、架空の世界で活躍するシリーズの最初のお話です。
![]() | 精霊の守り人 (新潮文庫 う 18-2) (2007/03) 上橋 菜穂子 商品詳細を見る |
読み出したら止まらなくなって、最後まで一気に読んでしまいました。
こういう本との出会いがあるから、読書はやめられない。
まったく、心からそう思わせる素晴らしい作品でした。
まずファンタジー作品として、架空の世界がきちんと作りこまれているので、違和感なくその世界へ入り込めること。
これはファンタジー作品の大前提ともいえますが、 日本人作家の作り出すしっかりしたファンタジーの世界は、違和感がないどころか、土や風のにおいさえ感じさせる どこか懐かしい風景にさえ思えました。
そしてそこで活躍する人々がなんとも魅力的で生き生きしています。
特に、めっぽう強い女主人公バルサには、頼もしく胸のおどるような戦闘能力のほかに、内面に母性ともいえる優しさを備えているエピソードや、育った境遇からくる寂しさや使命感を心に秘めたいきさつなど多方面からスポットが当てられ、ひきこまれずにはいられません。
バルサの周囲の登場人物たちも、それぞれの行動や気持ちが まるで息をしているかのように感じられ、どれも魅力的です。
読み手の立場によっては、 バルサを愛しながら黙って見守り続けている幼なじみの呪術師タンダに共感を覚える人もいるでしょう。
また、年齢の近さから第二皇子チャグムに自分を重ね合わせる幼い読者もいるかもしれません。
これらの登場人物たちが経験する出来事の なんと不思議で過酷でスリリングなことか。
そしてそれぞれが、時に運命の過酷さを呪い くじけそうになりながらも、戦い、支えあい、絆を深めつむいでゆくストーリー。
物語の終盤で、第二皇子チャグムがバルサに向かって万感の思いを込めて
「チャグムって呼んで。」
と言い、それにバルサが応えるシーンでは、その心の動きが胸にせまり、思わず涙がこぼれてしまいました。
独自のファンタジー世界の確立、魅力的な登場人物たち、筋立ての面白さ以外に、日本語の確かさ、作品の底に流れる作者の目のあたたかさ・・と、素晴らしい点は他にも何拍子も揃っているのですが、しかし、私などがひとつひとつ解説するより、まあいいから、とにかく一度読んでみて と言うのが一番正解のような気がします(笑)。
冒頭で、ティーンエージャー向けに書かれた小説と紹介しましたが、大人の読書家にもじゅうぶん満足のゆく一冊です。
「新潮の100冊」のリストに入っているのも頷けます。
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新潮文庫の100冊2008
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フラッタ・リンツ・ライフ
2008.09.13(18:53)
「スカイ・クロラ」シリーズ、時系列で3作目に当たる作品です。![]() | フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (2006/06) 森 博嗣 商品詳細を見る |
今回の主人公は、クリタジンロウ。
「ナ・バ・テア」「ダウン・ツ・ヘブン」の女性主人公クサナギスイトの部下に当たる彼は、長く彼女のもとで仕事をしており、信頼も厚い戦闘機パイロットです。
そして彼もまたクサナギスイトや多くの戦闘機パイロットと同じくキルドレです。
そんなクリタを通してスカイ・クロラの世界を感じ、クリタの内面を知り、また外から見たクサナギスイトを知るという展開が、とても新鮮で面白かったです。
が、「フラッタ・リンツ・ライフ」のみどころは、やはり、クサナギスイトに訪れた大きな変化。
予期せぬまま彼女の身に起きた出来事。
それが、まるでゆっくり回転しながら不穏できな臭い渦巻きをつくり、クサナギ自身だけでなく、クリタや周囲、そして世界を巻き込みながら巨大な渦になってゆくのを見ているような気持ちになりました。
また少し明らかになったスカイ・クロラの世界の事情に なるほど と頷いたり、予想外の出来事に おおぅ・・と唸ったり、ドキドキしたりしながらページをめくり続けました。
しかしすべては未解決のまま次の物語に引き継がれるようです。
ああ。続きが気になる。
ここで、このシリーズを中断できるわけないですって。
次は「クレイ・ドゥ・ザ・スカイ」です。 早く読みたい(笑)
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ダウン・ツ・ヘブン
2008.09.01(17:56)
「スカイ・クロラ」シリーズで時系列的に「ナ・バ・テア」の次にあたる作品です。![]() | ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven (2005/06) 森 博嗣 商品詳細を見る |
今回も主人公はクサナギスイト。
前作で基地を去ったカリスマ的パイロットにかわって、今回の彼女は、エースパイロットとみなされる存在になっています。
しかし、彼女の唯一ののぞみは変わらず、戦闘機で自由にとぶこと。
エースパイロットとしての好待遇も名声も、戦闘機で自由にとぶことへの妨げになるならば、彼女にとって何の価値もないどころか邪魔なものでしかありません。
常に敵に遭遇する可能性のある戦闘機でとぶということは、常に死の危険と隣り合わせです。
しかし、それさえ出来るなら、ほかに何も望みはないというほどに、ひたすらに戦闘機で自由に飛びたいと願うクサナギスイト。
怪我でもしない限り死なないキルドレと呼ばれる人種である彼女が切望しているものは、生きている実感をつかむこと なのかもしれません。
生きる実感は、死の存在を身近に感じたときにこそ、強く意識するものだから。
装丁にはじまり まるで詩のような文章の体裁で独特の透明感と浮遊感をかもしだす飛行シーンなど、すべてが新鮮で、その新鮮さに魅せられるままに読みきってしまった「ナ・バ・テア」の雰囲気は「ダウン・ツ・ヘブン」でも そのまま光っています。
それにしても、霧が薄れるようにスカイ・クロラの世界観や主人公のキャラクターが見えた気のする二冊目にいたり、ますますこのシリーズが気に入ってきました。
早く続きのシリーズが読みたい、続きのあることが幸せ。
そんな気持ちになるのも、なんだか久しぶりのような気がします。
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食堂かたつむり
2008.08.25(20:20)
筆者は、音楽関係で活動している方なのだそうです。どうりで、帯の推薦文にミュージシャンの名前が並んでいると思った(笑)。
![]() | 食堂かたつむり (2008/01) 小川 糸 商品詳細を見る |
ひとりの女性が、大好きな料理を通して、幼い頃からの母親との確執や失恋を乗り越え自身のアイデンティティを確立してゆくお話です。
平易な言葉使いであっさり淡々と物語を進めてゆく文体が、どこか吉本ばななさんや小川洋子さんを思い出させました。
また、物語中にふんだんに出てくる いろいろな料理の調理法や素材の丁寧な扱い方の描写から、作者は本当に食べる事や料理が好きで大事に思っているのだろうなと感じました。
それは、まるで「あなたのために」(末尾に紹介アリ)の辰巳芳子さんのようで。
つまり、とても女性らしさを感じる一冊 でした。
ところで、あっさりと柔らかな文体や、食べ物についての細やかな描写といった評価と、小説としての満足度、納得度は、別 といいますか、私は、少なくとも一箇所 激しく違和感を覚えるシーンがありました。
それは、ペットの豚「エルメス」に関してで、この部分には首をかしげた方が もしかしたら多かったのではないでしょうか。
作家としての視点や考えと、読者の共感度や納得度。
そのかねあいを考えたり折り合いをさぐってゆく というのは難しいことなのかもしれませんが。
「あなたのために」
誰かのために、ていねいに心を込めて料理を作りたくなるレシピ本です。
![]() | あなたのために―いのちを支えるスープ (2002/08) 辰巳 芳子 商品詳細を見る |
ナ・バ・テア
2008.08.21(08:03)
オレンジ色に染め上げられた雲海の写真に透明のプラスチックのカバーの付けられた装丁。その新鮮さに目が留まりました。
そして ナ・バ・テア という不思議なタイトル。
下に小さな斜体で None But Air と入っていました。 アラビアの遺跡の呪文かなにかかと思った(爆)
見た目に惹きつけられて本を手に取ったのは久しぶりでした。
このとこずっと、書評やなにかで気になる本をチェック。そのままネットで図書館予約かAMAZON直行パターンだったわたくし。
書店をゆっくり散策する楽しさを忘れていたことに あらためて気がつきました。
![]() | ナ・バ・テア (2004/06) 森 博嗣 商品詳細を見る |
背景の説明がほとんどなされないまま主人公視点で進んでゆく物語。
どのような世界で展開している話なのか、その世界の価値観さえ説明らしきものは一切なくて、物語の中から読者が推測するにまかせています。
対して主人公の内面や心情はとても細やかに語られていて (主人公視線で進む話なので当然と言えばそうなのですが)、その背景との対比が面白く新鮮でした。
そして、明らかに架空の世界の戦闘機パイロットの物語はとても不思議で新鮮さに満ちていたけれども(その装丁のように)、読み終わってみたら、ひとりの少女の恋の物語というたいへんオーソドックスな内容に集約されていったように思えました。
人は誰でも愛が必要で愛を求めるいう原点への回帰 というか。。
そのような読み方は、正しくないという気がするけれども、しかし新鮮さとオーソドックスさとの対比という意味で これもとても興味深く思いました。
現在映画が公開中の「スカイ・クロラ」シリーズの一冊で、時系列的に一番はじめにあたるのが この「ナ・バ・テア」になるそうです。
次は、時系列に沿って、海と空がグレー一色に染め上げられた装丁の「ダウン・ツ・ヘブン」を読もうと思います。
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流れ行くもの
2008.08.01(13:17)
上橋 菜穂子さんの守り人シリーズはとても人気があるようで既刊が何作も出版されています。これまで何度か目にすることはあったのですが、ぶ厚いシリーズモノなので手に取るのを躊躇していました。
が、たまたま本好きの友人が、うちの次女がきっと気に入る本だと思うよと、いわば「お試し」的に「流れ行くもの」を薦めてくれました。
一話完結のお話三編の入った いわば外伝です。
これを読んで気に入ればシリーズのほうを読めばいいよと。
![]() | 流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (偕成社ワンダーランド 36) (2008/04/15) 上橋 菜穂子 商品詳細を見る |
で、さっそく入手して次女に渡したところ・・・
なんとものすごい集中力で1日で読み終わってしまいました。
そのあと私も読んでみたのですが、世界観も文章もしっかりした良質のファンタジーだと思いました。
さいわい次女も気に入ったようですので、続けて本編の守り人シリーズも与えようと思います。
(私も一緒に読みます・・「精霊の守り人」は新潮の100冊にも入っているし・・)
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