2009年05月

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  2. 最悪なことリスト/トリイ・ヘイデン(05/31)
  3. ヒルベルという子がいた/ペーター ヘルトリング(05/31)
  4. 河合隼雄のスクールカウンセリング講演録(05/27)
  5. 鳥葬の山/夢枕獏(05/20)
  6. 陰陽師―飛天ノ巻/夢枕獏 (05/16)
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最悪なことリスト/トリイ・ヘイデン

2009.05.31(18:18)
最悪なことリスト最悪なことリスト
(2004/05/19)
トリイ・ヘイデン

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シーラという子」や「タイガーと呼ばれた子」で有名なトリイ・ヘイデンがはじめて子供向けに書いた物語。
小学校中学年くらいからじゅうぶん読めると思います。

知的障害を持ち、施設から里親へ、里親からまた別の里親へ。
可愛がられることなく引き取り先を転々とするデイヴィッドは、心の中で常に最悪なことのリストを更新しています。
そのリストの一位はいつも「気にかけてくれる人がいないこと」。
デイヴィッドの境遇では無理からぬことです。

そんなディヴィッドの新しい里親はひとり暮らしのお婆ちゃん。
お婆ちゃんはけして裕福な暮らしではないけれど、ディヴィッドに子供部屋をあてがい、毎日デイヴィッドのために温かい料理を作ります。
物静かなお婆ちゃんは、デイヴィッドが問題を起こしても頭ごなしに悪い子扱いせずフェアな態度で話しを聞こうとします。

安心して良い環境と見守ってくれる大人がいることで、デイヴィッドの心は徐々に成長します。
お友達を作ること、人の気持ちに気づくこと、小さな生命を可愛がること・・・


前記事に続き、障害を持った子供、保護者から見放された子供の物語になりますが、「ヒルベルという子がいた」では見ることの出来なかった幸福な結末がこの物語では与えられます。
児童向けの読み物なのでそのほうが良いと思われる方も、また、安易すぎると感じる方もいそうです。
また「シーラという子」や「タイガーと呼ばれた子」を読んで衝撃を受けた方には 物足りなく感じるかもしれません。
でも、どの子供も、安心できる環境と愛してくれる保護者を得てはじめて健やかに成長をはじめることができる、そのメッセージに間違いはない と思うのです。


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ヒルベルという子がいた/ペーター ヘルトリング

2009.05.31(17:44)
ヒルベルという子がいた (偕成社文庫)ヒルベルという子がいた (偕成社文庫)
(2005/06)
ペーター ヘルトリング

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出産時のトラブルから常に頭痛に悩まされている少年ヒルベル。
他人とのコミュニケーションを取ることが極端に苦手なうえ、頭痛が耐えがたくなると自分でもわけがわからなくなってしまい、問題行動を起こしてしまう。
そんなヒルベルは母親に見放され、子供の施設に預けられています。
お話は、ヒルベルの施設での暮らしぶりを、施設の他の子供達や保母さん、医師との係わり合いを中心に淡々と綴られています。

小学校高学年から読める児童書ですが、テーマは重く、読後も考えずにはいられません。

病気を持って生まれてきた子供は可哀想ですが、保護者に見捨てられてしまった子供はもっと可哀想です。
しかし二重の意味で可哀想な子供ヒルベルのまわりには、施設の保母さんたちや、毎日やってきて施設の子供達を診察する医師など良識と優しい気持ちを兼ね備えた大人たちがいます。

保母さんたちは ありのままのヒルベルを受け入れ、言葉を話すのが苦手なヒルベルの気持ちを理解しようと心を砕いています。
みずからも孤児を3人養子として育てている医師は、ヒルベルにも暖かい気持ちで診察をしています。

彼らは福祉職員として最善を尽くしており、また、人格的にも立派な人々です。

しかし、保母さんたちには、ヒルベルのある行動を理解することはできても、彼の心と触れ合い理解し交流を持つまでに到ることはできません。
また、医師も4人目の孤児を引き取ることは無理で、ヒルベルを養子に迎え入れることはできません。

結局持病の頭痛が重くなってきたと診断されたヒルベルは、別の施設へと移されてゆくのです。

お話は、ヒルベルをとても好きだった保母さんのひとりが何年たってもヒルベルのことをよく思い出し、あの子はその後どうなっただろうかと考えた と結ばれています。

病気の子供、親の世話を受けられない子供を可哀想だ、気の毒だ、なんとかならないかと思う気持ちが本心でも、そのような子供達が本当に幸福になるためには福祉だけでは不十分。むしろその子のために保護者として関わる事のできる大人の存在の方が大事な場合が多いように思います。
だけど、私達は保護者にはなれない。
お話の最後で保母さんがヒルベルはどうなっただろうと思うことと、私達が世界中のヒルベルのような子供達を思うことは とても似ている気がします。


ところでこの本は河合隼雄さんの児童書の書評集「「うさぎ穴」からの発信―子どもとファンタジー」で知り、読んだのですが、なんと本書巻末にも河合隼雄さんの解説が載っていました。
28ページにも及ぶ詳細な解説で、ひとつの作品の解説としては「うさぎ穴からの発信」よりこちらの方が当然詳しいです。
心理学的な立場からの解説は自分の読み方、感じ方とは違う新しい面の発見になり、たいへん参考になりました。
この本を手に取られる方は読後ぜひ解説のほうもお楽しみください。


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河合隼雄のスクールカウンセリング講演録

2009.05.27(07:46)
河合隼雄のスクールカウンセリング講演録河合隼雄のスクールカウンセリング講演録
(2008/08/31)
河合 隼雄

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子供が持ち帰る中学校からのお便りの中に、時々スクールカウンセラーの紹介や在校時間のお知らせが入っています。
今当たり前に受け取っているこのお便りですが、公立中学校にスクールカウンセラーが配属されるようになったのは学校教育としてはまだけっこう新しい試みです。
モデル校による調査開始が1995年ですから。

河合隼雄さんは、この試みの普及に尽力された方であり、本書はその一環としてスクールカウンセラー向けに行った1996年から2006年のあいだに行われた講演のうち8本が収められた講演録です。

隼雄さんの、カウンセラーとしてのものの見方、スクールカウンセラーの存在意義についての解釈などに触れることは、実際に現場にいらっしゃるスクールカウンセラーの方々にとっては、本当に値千金の経験であったろうと思います。
そして隼雄さんの人としてのものの見方、学校のありようについての説明、社会と子供との関係の解釈などは、カウンセリングのことを何も知らない私にも、大変勉強になり考えさせられることが多くありました。

まだまだ活躍して欲しかった。
隼雄さんの書いたもの、話したものに触れるたびにそう思ってしまいます。


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鳥葬の山/夢枕獏

2009.05.20(07:33)
鳥葬の山 (文春文庫)鳥葬の山 (文春文庫)
(1993/12)
夢枕 獏

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現代ものホラーの短編集です。

と言ってしまっていいのか?

人を喰う得体の知れないなにかの集合体で出来た家に迷い込んでしまうなんて、間違いなくホラーだと思う。

でも、高名な物理学者がウイグルの高原で羊飼いの少年と世界観についておしゃべりをするお話は素敵でわくわくしてしまい、ホラー短編集の中の一編としては間違いになってしまう気もします。
でも、その物理学者が死んだはずのアインシュタインだから、もし実は生きていたという設定だとしても100才をとっくに過ぎていることになってしまうから、やっぱりホラーかも。

土に埋められた男がいろいろなことを考えるお話では、人の思念というのはそんなふうに残るものなのかもと思い、こういう考え方は好きだと思いながら すっと読んでしまいました。
でも、土に埋められて何年もたち、既に形がなくなってしまっているか相当崩れているかだろうに、いまだに意識がその場に留まって毎日思考に明け暮れるなんて、考えてみるとかなり怖い。だって、自分が知らずに歩く道の下にそんな思念があるかもしれない。

「よく考えてみると相当怖い」というのは、やはり優れたホラーということなのでしょう。

でも、「陰陽師」シリーズの合間に読んでしまったのは失敗でした。
イマイチ現代ものへと頭が切り替わりきれず、堪能し損ねた気がします。
なんとなく、安部公房のあととかに読むのがいいかも などと思いました。


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陰陽師―飛天ノ巻/夢枕獏 

2009.05.16(18:00)
陰陽師―飛天ノ巻 (文春文庫)陰陽師―飛天ノ巻 (文春文庫)
(1998/11)
夢枕 獏

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前作「陰陽師」に続けて瞬く間に読んでしまいました。
怪しくて怖くてはかなげな雰囲気で、どこかユーモラスで、そして懐かしい感じのする世界。
短編の連作のようなつくりのせいか読んでいてちっとも肩がこらない。
さーにんの寝しなの極上の読み物になってしまいました。でも、怪奇の世界のお話ですから人によっては夜はちょっと・・かも。

この巻には以下の7編が収められています。

*天邪鬼
*下衆法師
*陀羅尼仙
*露と答へて
*鬼小町
*桃薗の柱の穴より児の手の人を招くこと
*源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと

「露と答へて」の中の当時の宇宙観についての短い説明の部分が、本筋とは関係ないのですが面白かったのでメモしておきます。

この時期、すでに宇宙という言葉は、時空を差すものとして成立している。
中国の古書『尸子』(しし)に、
”上下四方を宇(う)といい、往古来今を宙という”
との記述がある。

古代ギリシアを発祥とする西洋の宇宙観では宇宙は「秩序」を差す「cosmos」という言葉であらわされており、時間と空間という概念がクローズアップされたのは近年になってからですが、中国の人々は古代から宇宙を時空として捉えていたのですねえ。


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